（スタッフ）

製作＝松竹（大船撮影所）

企画＝にんじんくらぶ

製作＝桑田良太郎

撮影＝厚田雄春

音楽＝木下忠司

美術＝平高主計

編集＝浜村義康

照明＝須藤清治　　

録音＝西崎英雄

（コメント）

○映画について考えるとき、どこから語ってもいいのだが、ここでは、キャメラが厚田雄春であることからも、どうしても画づくりの方法意識が注目される。映画にとって映像の持つ意味が大きいことは言うまでもないが、小津安二郎監督作品の名手であるキャメラマンがここでは、一層本領を発揮している。

コントラストの強いモノクロ画面と静かな風景を固定ショットでとらえ、さらに人間の内面の暗い情念に踏み込む。スピードをあげて疾走する米軍の大型トラックや暗い夜道を酔った男女が絡み合う道行きなど小津作品ではあり得ないシーンにキャメラは躍動感あるみずみずしい画面を光と影の中に浮かびあげる。

○しかし、作品評価となると、欲張って多くの話を詰め込みすぎて、ごった煮の印象が否めない。この取り壊される長屋生活の貧しさややくざの生態や学生の考えやこの街もなんだかすべてが嘘っぽかったが、全般に流れる重苦しさは、ラストの仲代の鮮烈な死の衝撃によっても解きはなたれることがなかった。

山田五十鈴が歯にはめものをして強欲な家主を演じていたが、うまい人だけになおさらぶちこわしだ。このあたりは、監督の責任だし、女優・有馬稲子のいい作品が残念ながら思い出せない。（2000.4.22）

（キャスト）

有馬稲子　
渡辺文雄　
仲代達矢
宮口精二
山田五十鈴

公開年月日：1956.10.23

映画館＝横浜シネマ・ジャック「さよなら松竹大船撮影所」（2000.3.25-5.19）