（スタッフ）

製作＝東宝

製作＝森田信、角田健一郎

原作＝城山三郎

撮影＝逢沢譲

音楽＝池野成

美術＝育野重一

編集＝兼子玲子

照明＝小島正七

（コメント）

○川島雄三監督の遺作となった作品である。社長シリーズや無責任シリーズの原型のようにも見えた。前年の「しとやかな獣」にも似ている。

「しとやかな獣」でのアパート一室を人間関係を透し見せる効果を持たせた画面構成の工夫が、この映画では伴淳の社長である銀座のオフィスが無駄な装飾を廃した簡素な室内に出来ているという設定であり、同時にキャメラが独特のアングルで捉えることも可能にしている。

ここらは、美術に優秀なスタッフがいると思うのだが、手元の資料では明らかではない。

○伴淳のケチで合理的な人間性とハナの派手で豪放的でいかにも俗人ぽく、しかも、軽薄でいかがわしいという政治家が、伴淳の質素でありながら、鉄鋼業一筋の会社社長として成功し、３０００人の社員と借金なしの自己資本１００パーセントの健全な経営手腕を発揮している伴淳に私淑している。

やがて、ハナが実は清廉潔白な好人物であったことがわかるという話である。一番怪しまれるのは、ハナの女性関係であり、まあ、なぞがなぞを呼ぶというように展開する。女性陣は団玲子、福田公子、水野久美である。

○伴は、下り坂にある鉄鋼業を「イチかバチか」で、全財産をつぎ込んで大転換を図るべく、会社工場の移転を計画している。過去の息子の死や愛妻の死（別れを惜しんで、ひとりで葬式をあげている）などの背景もあるのだが、意欲を奮い立たせている。

喜劇であることの軽薄さと嘘っぽい展開ではあるが、人間への洞察が一歩も二歩も深いといえるし、結構楽しめた。キャメラ位置を意識し切り取る。伴淳とからむ千石の演技も楽しい。（2001.7.7）

（キャスト）

伴淳三郎　
高島忠夫　
団玲子　
ハナ肇　
千石規子

公開年月日：1963.6.16

映画館：横浜シネマ・ジャック「個性派俳優特集＝伴淳三郎」

京浜急行黄金町駅徒歩5分