（スタッフ）

製作＝大映

企画＝藤井浩明/林万夫

原作＝黒岩重吾「西成山ホテル崖の花」

撮影＝小林節雄

音楽＝林光

美術＝矢野友久

録音＝須田武雄

照明＝渡辺長治

編集＝中静達治

（コメント）

　美術が違うが、「でんきくらげ」と同じスタッフで、同様な予算で撮られているのだろう。今回１６ミリ版ということもあるのか、どうもこれも増村映画にしては、映像が安っぽい。ストーリーも主題も増村らしく、人間の根源に迫る心理劇にしていることは見事だし、当時見たときも、大谷の存在とともに勝さんの心意気にも感じ入って喝采した憶えがある。
　妹から目が離せないんで、殺しはやるけど、務所に行くのに身代わりを頼む。それが十八になる妹のことだという。そんなやくざの男が勝の役である。尋常な話ではない。異母兄弟である。可愛くて愛おしい勝は大谷に近づく男を半殺しの目にあわせる。勝のアクションは「兵隊やくざ」で喝采された「強さ」と同じものである。まあ、貧しさの境遇で妹を育ててきた男が、やくざをやりながら妹の成長を生き甲斐にし愛おしむ。これは自然な人間の感情であり、切実な悲鳴が聞こえると増村は展開する。
　勝の兄からの束縛を嫌って、生きようとする大谷の行動に、三十年前の私と今では、見方も感じ方も違うだろうが、当時は新鮮であった。女優としてその後の展開にも、大いに関心があるが、まあ、これが「肉弾」の全裸デビューから２作目ということもあって、その初々しさと芯の強さは、印象的である。だから、川津の先生に抱かれにいく浴衣姿（バックも浴衣も「にいちゃん」が買ってくれたもの）やホテルに田村を誘う下着姿から肌を露わにしたセックスシーンに覚悟を決めた能動性が女優への覚悟と役柄とがダブって見える。
　兄と妹は互いの気持ち確認しあって「死」覚悟する。ここでは、近親相姦そのものまでは描かないが、増村監督は、どうも、もう一歩踏み込みたい意欲はあったようにも感じられが、勝の自爆ともとれる壮絶な死を用意し、この映画は終わる。（2001.4.5）

（キャスト）

勝新太郎　
大谷直子　
太地喜和子　
田村正和　
川津祐介

製作年：1970

映画館：横浜シネマ・ジャック「日本映画大全集Part3」「若尾文子と増村保造」