（スタッフ）

製作国＝ドイツ

製作＝ティームワークス

共同製作＝Sat.1 RAI キルヒ・メディア

製作＝ニコ・ホフマン
アリアーネ・クランプ

脚本＝ヨハネス・W・ベッツ

撮影＝エーフア・シュナレ

美術＝ミヒャエル・ブファルツアー

衣装＝アストリット・カラス

音楽＝ハラルド・クローザー

編集＝エーファ・シュナレ

録音＝サブリーナ・ナウマン　ローランド・ヴィンケ

（コメント）
　大変面白く感動的である。実際あった話だから脱出には成功すると思って見ているのだがハラハラドキドキさせられる。見ていて教えられ確認した歴史的な事実。1ベルリン東西の壁は、1961年に東ドイツから西ドイツに流出する住民を防ぐために突然つくられたもので、それまでは自由に行き来していたということ。だから、2家族や恋人など生き別れになるものが多く存在したこと。（カタログの解説によると1961年8月13日に交通遮断、22日から壁の構築を始めたとある。また、当初は、東独政府の警戒も緩やかだったという。）3東ドイツにはゲシュタポのような秘密警察が存在したこと。4たくさんトンネルが掘られ東から西へ脱出したこと。ここでの主人公ハリーは、その後も「トンネル」専門家として活躍したこと。
　そして、わたしたちは、東西冷戦下といえども、世界第二次大戦後から1989年の壁崩壊まで、共産主義体制下では戦争状態が内面化したまま継続し粛清、弾圧が日常化した恐怖政治下にあったという事実といまでも共産主義政権及び軍事政権下では、自由の制限や言論弾圧による犠牲者が後を絶たないという認識は新たにしておくべきなのだろう。
　しかし、執拗にトンネルの企てを阻止しようとする東ドイツ国家保安省の役人クリューガーは、逃げるハリーに「わたしはわたしの信念で行動している」と自信を持って告げる。信念と信念がぶつかる東西対立は、歴史がすでに証明済みだと言ってすまされない。人間の思想と信念はやっかいである。映画はこの思想と信念を語ることよりも、夫婦愛と家族愛、そして友情に重点を置き描いているが、東ドイツの秘密警察の取調べなどが、陰湿で人間の尊厳性を踏みにじる行為としてゲシュタポのイメージと酷似して存在するのは、あらゆる国家や組織が持つ権力が暴力装置としての機能を持つことを意味している。あえていえば、国家そのものの廃棄へ向かうことが私たちにとっての課題でなければならない。
　ここでは、見るものを感動させる、ふたりの女性の生きざまについて触れておきたい。東ドイツに恋人が居るということで、トンネル作業に参加した女性フィリッツィは、恋人の壮絶な死から絶望、憔悴（ハリーとの刹那的な性交渉が過激に描かれる）、自殺未遂から回復しハリーのもとに戻る。そして、トンネルから脱出に重要な役割を担う。そして、もうひとり。ハリーの親友であり、技術者として、このトンネル作業から欠かすことができないマティスの妻カロラは、夫と離ればなれで東独でこどもを生む。東独の秘密警察に脅され、スパイとなって情報を漏らしているのだが、最終的には、ハリーの妹ロッテの夫（この夫も救うことになる）に「こども」を託し、脱出計画の発覚を遅らせ脱出を成功に導く。大変魅力的に描かれている。（05.6.14）

（キャスト）
ハイノー・フェルヒ（ハリー・メルヒャー）
ニコレッテ・クレビッツ（フィリッツィ）
アレクサンドル・マリア・ララ（ロッテ・ローマン）
セバスティア・コッホ（マティス・ヒラー）
クラウディア・ミヒェルセン（カロラ）

製作年：2001

ドイツ映画祭2005
「映像の新しい地平　特別編」2005.6.4-12
有楽町朝日ホール