（スタッフ）

製作＝日活

製作＝大塚和

原作＝今東光「テント劇場」より

脚本：山内久（鈴木敏郎名義）

撮影＝高村倉太郎　

音楽＝黛敏郎

美術＝中村公彦

照明＝大西美津男

編集＝中村正

助監督＝浦山桐郎

（コメント）
　今村監督の処女作である。なかなか見る機会に恵まれずやっと見ることができた。「戦後13年経過し見事に復興された大阪」というナレーションと大阪近辺を空撮した映像から始まる。通天閣の下にカメラは降りていく。当時、テント劇場という言い方が一般的だったのかはよく知らないが、ストリップということで10人近くの女の踊りと時代物の芝居が組まれ,大人50円という入場料となっている。

冒頭、観客は「ストリップ」が終わると芝居を見ないで帰ってしまうという展開で笑わせる。どこか寂れていて金もない、貧乏な一座は座員に給金も払えず解散という話になるが、役者稼業しか能がないと座長に付いてもう一公演ということで揃って河内にやってくる。ここではなぜか盛り上がりを見せ満員の観客を集める。河内の住民のしたたかさと役者稼業の喜怒哀楽と舞台に立つ座長の娘姉妹と大学出の長門裕之の苦悩と恋が描かれる。

　とにかく、賑やかで勢いのある大衆が、この河内に役者一座を取り巻いて明るく騒いでいるという感じである。映画として多くの群衆を入れ込み一座の猥雑なエネルギーと大衆の勢いを映し出す。まあ、こうして今村映画が始まったんだと大いに納得する。

　長門裕之と南田洋子、南田の夫で二枚目な役者役の柳沢真一。座長の滝沢修、その女房役の菅井きん、脇役としての小沢昭一、西村晃、そして名前が出てこないがストリップの女優陣など出演者も多く賑やかだ。もう少し言えば、大学出てまでも大衆演劇に意欲を持つ長門に座長の娘姉妹（役者でもある）が惚れる。長門は、二枚目スターの柳沢の妻でもある姉の南田に惚れている。そのことはふたりの姉妹は承知の上で、長門は妹の誘惑に負け関係を持ち、さらに姉の南田とも関係を持つことになる。座長や夫である柳沢の前で、すべてが話され、さあどうする？　という展開になる。

　とぼけた二枚目といった役どころの柳沢真一が踊りなどの芸に熱心の役者であることが描かれ、見ているものは柳沢に同情が集まるが、本人は思案げな顔をしながら、わたしが一座を離れると言い出す。すると南田は「わたしはこの一座もあなたとも離れられない」と泣き崩れる。滝沢の台詞にあるのだが、これで一幕が下りて、一座は河内の人々に賑やかに見送られ次の地へと二台のトラックに荷物ごと分乗し次の地へと向かう、そして、二幕目の幕が上がる。長門と妹は一座を離れ新たな旅立ちへと押し出されていく。（2005.9.12）

（キャスト）
滝沢修
菅井きん
柳沢真一
長門裕之
南田洋子
喜多道江
西村晃
小沢昭一
高原駿雄

公開年月日：1958.5.20
白黒／シネマスコープ・サイズ／３５mm／92分

映画館：川崎市民ミュージアム「今村昌平の世界」