（スタッフ）

製作＝日活

製作＝大塚和

原作＝藤原審爾　

脚本：山内久（鈴木敏郎名義）　今村昌平

撮影＝姫田真佐久　

音楽＝黛敏郎

美術＝中村公彦

照明＝岩木保夫

録音＝沼倉範夫

編集＝丹治睦夫

助監督＝浦山桐郎

（コメント）
　なるほどこれで果てしなき欲望ということかと納得して見終わる。西村晃が「赤い殺意」の前からこうした「今村映画」のいい役どころを振られていたんだということを知るとともに、身体を張った演技を見せる渡辺美佐子の日本映画での変遷が急に気になるがうまく思い出せない。

　敗戦時の隠匿物資（モルヒネ）を掘り出すという10年前の約束で駅前に集合する女ひとりと4人の男。首謀者の中尉は死亡し、妹だという女が登場するが人数も一人増えている。防空壕に埋めたのだが、今では商店街になっていて、どうも肉屋の位置だとわかる。そこで、空き店舗を「不動産屋」として借り受け、そこから肉屋の地下まで掘り進めるという作戦を開始する。

　加藤武、殿山泰司、小沢昭一、西村晃の4人とひとりの女（渡辺美佐子）、そして、風呂屋のオヤジで商店街の地主でもある菅井一郎、その息子で勤めもなくぶらぶらしている長門裕之、その恋人が肉屋の娘・中原早苗、ケチな商店街の老人が高品格というように、このシチュエーションと役者の名前を挙げただけでも何かが起きそうだ。このしたたかなオヤジ・菅井は、店舗を貸す条件に息子の雇用を持ち出す。

　人に知られずに縦穴横穴を掘ってモルヒネの入ったドラム缶を掘り出し売り捌いて大金を手にし山分けするということなのだが、それぞれ抱えている事情が違うし各自が信用できない。それぞれが怪しく疑心暗鬼に襲われながらも、大金を手に入れるためにトンネルの穴を協力し掘り始めるが、初めから、ヤクザの加藤は別件で犯罪を犯し逃げているし、殿山は渡辺美佐子が女として気になって仕方がない。小沢は朝鮮人であることからも暗くいじけている。
　そして、一方、対比的に、頼りない風呂屋の息子（長門裕之）と恋人（中原早苗）、そして恋敵の洋品店の柳沢真一といった関係を軸に商店街のお祭りや立ち退き騒ぎが描かれていく。

　商店街の立ち退き期限が迫る。順次取り壊しも進んでいる。トンネル作業は、泥まみれ血まみれなサバイバル状況の中で、ひとり女が生き抜き暗い穴から地上へとモルヒネも手に入れ這い出す。地上は暴雨暴風の中にある。女は重い荷物を持って必死に逃げだす。ここからの展開が映画としての見せ場にもなっている。ここでは今村監督は人間の欲望の果ての出口のない末路をしたたかな女に体現し描ききる（見るものはどうしても身体を張った渡辺美佐子という女優に感動している）。さらに、後日談として、ケチ老人（高品格）のしたたかさと長門と中原の若いふたりの行く末が明るく示され映画は終わる。（2005.9.12）

（キャスト）
長門裕之
渡辺美佐子
西村晃
殿山泰司
小沢昭一
加藤武
中原早苗
菅井一郎
高品格
柳沢真一
芦田伸介

公開年月日：1958.11.18
白黒／シネマスコープ・サイズ／３５mm／100分

映画館：川崎市民ミュージアム「今村昌平の世界」