（スタッフ）

製作＝今村プロダクション＋東京12チャンネル

プロデューサー＝岩井田久　鈴木久雄　

撮影＝姫田真佐久　橋本裕之　

録音＝紅谷愃一

編集＝岡安肇

（コメント）
　冒頭にある太くてしっかりした今村昌平のナレーションが、このドキュメンタリーの意図を簡潔に語る。そのままの言葉ではないが、戦後25年、平穏な日本に生身の戦争を思い起こさせるというようなことを言っている。マレー篇は、あくまでもその前哨戦だったというように。

　未帰還兵が、車座になって酒と料理を囲んで話す。藤田松吉、中山波男、利田銀三郎の三人だ。調子に乗ってよく喋る中山、話がしっかりしている藤田、全く話そうとしない利田。ときどき口を挟む今村。

　内容はだいたいわかるが、すべてというわけにはいかない。何故日本に帰らなかったのかということの一つに13年後に再び戻ると聞かされ待っていたんだということや日本に帰っても貧しい職人なるだけだということなど言っている。
　
　中山は上官の無能さ天皇にも批判的である。藤田は後で中山のような天皇批判には戦争当時なら切り捨てているという。しかし、藤田自身も天皇や上司には不満を持っている。命令の下にたくさんの人を殺したと言う。利田が話さないのは、どうもまだ組織や国家を恐れているということらしい。中山も藤田も、20代、30代という、若い年代を戦争に翻弄され、奪われた時間にたいする怒りを露わにしていた。

　最後のナレーションでは、今村は、若いブリキ職人などを徴用した戦中の悲劇を語るとともに、当時（1971年）も繰り替えされようとしているという余韻を残し締め括っている。（2005.9.20）

（キャスト）
藤田松吉
中山波男
利田銀三郎

放映：1971
カラー／スタンダード／16mm／47分

映画館：川崎市民ミュージアム「今村昌平の世界」